藤枝市の蓮華寺池公園近くの住宅街にある、人気のジャム工房「やまゆスイーツ」。
やまゆスイーツのジャムの原料となるのは、地元藤枝産を中心とした農薬や化学肥料の使われていない旬の果物や、減農薬などの特別栽培の果物たち。オーナーであり職人の小野延子さんが、すべて手作業でひとつひとつ作っています。
素材の素直な味わいを楽しめる、やまゆスイーツのジャム。
瓶の蓋を開けたときの香り、果実感の残るフレッシュさ。新鮮な果物を使ったジャムは、果物をそのまま食べているかのようなみずみずしさがあります。
小野さんがお店を始めるきっかけとなったのは、お母さんの作ってくれたいちごジャムの優しい記憶でした。
❚お店を始めたきっかけを教えてください
子供の頃、母が作ってくれるいちごジャムが大好きでした。母がジャムを煮ているときの香りがすごくいい香りなんです。またこの時期がきたって嬉しくなって。
当時、いちご屋さんが自転車や軽トラで売りに来ていたんですけど、母がいちごを大量に買っている姿を「かっこいいなぁ」と子供ながらに思って見ていました。
私自身が母親になった時に、改めて食の大切さに気が付いて、母が作っていたようないちごジャムを、皆さんに食べてもらえたらという思いがきっかけになりましたね。
❚やまゆスイーツという名前の由来はなんでしょうか
父方の曽祖父から代々受け継がれてきた食品加工業の屋号です。元々は鰹節加工業で、父が干物加工業をしていました。
もう父は食品加工事業を辞めてしまったのですが、やまゆの屋号はまだ残っていたので、せっかくだから馴染みのある名前を使いたくて、父にお願いしました。
❚ジャムの原料となる果物や野菜の生産者さんとはどのようなきっかけで出会ったんですか
ジャム作りを始めた当初は、無人販売や畑をとにかく駆け回って、おいしいフルーツに出会いに行ってました。おいしかったら畑にいる農家さんに「この果物をジャムに使わせて欲しいんですけど」とお願いをしたり。
それから農家の方々にまたご紹介いただいたりとかして、だんだん広がっていった感じです。
今は地元のお客さんが「いい生産者さん知ってるよ」とか教えてくれて、ご縁をいただくこともありますし、ありがたいことに農家さんの方から「ジャムにできないかな?」とご依頼をいただくこともあります。
❚生産者さんから受ける印象や、作物に向き合う姿勢などで感じたことはありますか
私がお会いするのは実りの時期だけなんです。作物は実りの時期は本当に一瞬で、それ以外の期間の方が長くて、大変なこともあるかと思うんですけど、一つ一つ丁寧に収穫している姿を見ていると、まるで我が子を愛しむような感じが伝わってきます。大事に大事に育てているんだなと感じます。
❚農薬や化学肥料を使わない野菜や果物の魅力はどんなところでしょうか
やっぱり安全で安心して食べられるというのが一番の魅力かなと思います。その果物自身が持っているパワーみたいなものが存分に生かされているというイメージを持っています。
❚ジャムにする原料となるフルーツや野菜はどのように決めていますか
四季の移ろいが感じられて、その時期に私自身がおいしいと感じたものですね。これはこういう風にジャムにしたらおいしいかなとか、どうしたらよりおいしくなるかなあって考えて。
果物ってその時、「今」しか実らない。本当は生で食べるのが一番おいしいんですよ。でも、ジャムにすることで、少しでも長くその「旬のおいしさ」を長持ちさせてあげたいなと。一年中その味を楽しめるというのがジャムの魅力だと思ってます。
❚秋にオススメのジャムをご紹介いただけますか
いちじくと梨もオススメですし、秋も深まってきたのでゆずや柿、ライムも美味しいです。
❚ジャムのおいしい食べ方を教えてください
定番なんですけど、こんがり焼いたパンとかヨーグルトですね。
果物そのものを食べているような味わいを目指しているので、そのままスプーンですくって食べちゃうっていうのもぜひお試しいただきたいです。
❚マーマレードと、ダルメイン世界マーマレードアワードについて教えてください
イギリスの方たちは、寒い冬の時期にマーマレードを一年分作って楽しむというのが伝統なんです。日本人が味噌を仕込むのと同じような感覚ですね。
ダルメインマーマレードアワードというのは、世界各国から3000瓶くらいのエントリーがある、世界的なマーマレードのコンテストです。「ダルメイン」というのはイギリスカンブリア州ペンリスにある大邸宅のこと。そこに住むジェーン=ヘーゼル=マコッシュさんが、館に残る古いレシピを発見したことをきっかけに、この伝統的なマーマレードを盛り上げていこうと2005年から始まりました。現地で授賞式やフェスティバルもあって、とても盛り上がるコンテストなんです。
❚コンテストに出ようと思ったきっかけは何かあったのですか
ジャム作りを始めたのを知った親戚が「コンテストがあるみたいだよ。せっかくなら応募してみたら?」って言ってくれたんです。
その時までは「作る」ということだけに精一杯でしたが、作ったものを客観的に評価していただける機会があるんだというところに魅力を感じて、エントリーしてみようと決意しました。
現地で行われる授賞式やパーティー、マーマレードフェスティバルも英語でやり取りしなければならず、緊張の連続です。パーティーでは、お酒やマーマレードを使ったお料理も出され、とても華やかです。
世界中から集まったマーマレード職人とお話をしたり、祝福しあったり、本当に素敵な時間を過ごせます。マーマレードフェスティバルにはマーマレードの愛好家も大勢集まります。マーマレード好きな方々に自分のマーマレードを召し上がっていただき、喜んでもらえたことは私にとっても大きな喜びになりました。
❚マーマレードやジャムと一緒に焼き菓子も販売されていますが、どのような焼き菓子を販売していますか
国産の新鮮な素材を使った焼き菓子を販売しています。スコーン、フロランタン、レモンケーキ、シフォンケーキなど素朴な焼き菓子です。
❚焼き菓子を販売しようと思ったきっかけはありますか
焼き菓子がすごく好きなんですよね。小学生のときに、おばあちゃんがオーブンとパン焼き機を買ってくれたんです。うれしくて、機械の説明書についていたレシピをもとに、毎日のように作っていました。双子の妹と二人で「これおいしいね」って出来上がったものを食べたりして。バタークッキーのレシピは、あのころからずっと作り続けている配合にしています。
❚ジャムから焼き菓子まで、すべて小野さんお一人で作られているんですか
そうですね、ジャムはこの銅のお鍋を使って作っているんです。果物の旬は短いので、とにかく手に入れたら急いで皮を剥いて、タネがあるものは取り除いて。大忙しですが、基本的には私が責任を持って仕上げています。
❚大変ではないですか
大変ですね(笑)でも、好きなんですよね、作ることも食べることも。ジャム作りを始める前は、常に時間に追われながら仕事をしていて、疲弊してしまうこともありました。私はジャム作りが大好きですし、四季を通して様々な果物を加工できて、今とても楽しいです。
ジャムを作り出してから、いろいろな人たちと出会えることも幸せですね。この間も枝豆をジャムにできないかって相談されて、枝豆でジャムは作ったことがなかったんですけど、いろいろな方にご協力をいただいて仕上げることができました。美味しく仕上がった時には本当に嬉しかったです。
❚ジャムや焼き菓子を皆さんにどんな風に食べてもらいたいですか
今は常に時間に追われているというか、忙しい人が多いと思うんです。そんな中で、ゆっくり丁寧に、手間暇かけて作られたものを、自分を労りながら食べてもらえたらなと思います。スローに作られたものを食べながら「いまを大切に」感じてもらえたらいいですね。
「旬の恵み」は短いんですけど、その「恵み」をぎゅっとひと瓶に詰め込んであります。それを食べてホッと一息つけるような、癒しの存在でありたいなって思っています。
四季のジャム工房 やまゆスイーツ
〒426-0015
静岡県藤枝市五十海1丁目2−3
TEL:054-645-3935
ジャム工房直売所の営業日:月・木・金
※変更の場合がありますので詳しくはお問い合わせください
こちらからご購入いただけます:
Comments